北京編 Part 2        ライター千遥

 ひとり旅にはツアー旅行にはない楽しみがある一方で、様々な事前準備が必要だ。今回は北京とチンタオの友人にお会いすることにしてあるから、双方の友人の都合をお聞きしなければ前に進まない。しかし、今はメールで即刻相手に伝わるから、そう苦労することはなかった。これは旅行記だから北京到着から書き始めれば良さそうなものだが、やはりその前段から書いてみたいと思う。人間の心理を理解できない店や店員の応対は、確実にお客を失うということの一つの例である。

 最初はチンタオ往復便の航空券を手配し、その間に北京を訪問しようと考えたが、調べるうちにそれは無理なことが分かった。チンタオ便は一日に2往復しかなく、都合のよい便を探すのは難しかったからである。それで北京往復に切り替え13日間の概ねの日程を決め、格安航空券をインターネットで探し始めた。格安航空券の最大手業者のページから適当な便を探した。
 概ね良さそうな時間帯のものがあったが、細部がちょっと分からない。電話で聞いてみると、若い女性が「とにかく来店下さい」と言われる。やはり対面して細部を確認したほうがよかろうと、さっそく著名なH社を訪ねた。

 ところが、応対に出た若い男性の態度がいかにも面倒くさそうな感じがした。まるで真剣さがないのである。あっさり引き上げようとおもったが、生来の気性がもくもくと湧き上がってきた。
 「あなたの態度をみていると、まるで『欲しいなら売ってあげるよ』と見えますが..」「もっとお客の要望に、真剣に対応できないのかね」。やんわりと、当方の意見? を述べた。途端に、相手は急に慌てて態度が変わり、当方の希望する航空便を探し始めた。ようやく希望する航空便が見つかった。しかし、その間に当方の購入意欲は急速に衰えていった。ここで購入してもよかったけれど、最初の応対があまりにも冷たいのが気にかかり購入する気持ちは完全に失せていたのである。


  
                
明の十三陵   すべて拡大表示できます    

 
 それではと帰りがけにふとビルを見上げると、昔は公社といわれたJ旅行業者があった。ビルの2階にあがると結構なお客がいた。新婚旅行の相談をしているカップルなどもいる。係りの女性は、夏休みを前に忙しい時期だと言われる。ちょっと待っている間に、北海道の名産菓子とお茶を頂戴した。なかなか待たせ方も上手い。ここで先ほど予習したことを繰り返し、出発日と帰国日を決めるとともに航空便も確定させた。
 わたしは普段は非常にトロイ人間だが、あるとき突然変異する習性があるようで、この場ですべてを決定してしまった。応対したお姉さん(おばちゃんかな)がとても丁寧だったこともあり、ついでにJ社関係のカードにも入会した。入会すると2,000円の商品券がもらえる。早速それを利用して航空券も割引してもらった。

 北京の友人からは、成田空港で中国国内で使える携帯電話を持参するよう要請されていた。一人でぶらつくわたしを保護観察するためである。わたしは、国内では殆ど携帯電話は使用しない。娘からもらったプリペード式の携帯はあるものの、使用する頻度も少ないため期間内にカード残高を使い切るのに苦労したものである。その後携帯電話機は、書棚で眠ったままになっている。
 

                
                                     
北京駅前での筆者

 携帯電話のレンタル料金は、表向きは7日間で40分の通話料を含んで7,600円である。しかし実質は13日間借りたことと、紛失や破損の保障料なども含んで総額は13,000円ほどになった。まあ実際に、かなり便利にかつ有効に使わせてもらった。 そのうえ異国で友人に見守られていたと考えれば、レンタルの携帯電話機は、まことにありがたい存在であったことは間違いない。

 航空券を確保し携帯電話も予約し、海外旅行保険は知人の会社に頼み、あとは具体的な宿泊先の決定だ。宿泊先が決まらねば「放浪の旅」になってしまう。何といっても泊まる場所の決定が最重要なことは言うまでもない。これは事前での調整どおり、北京6日間・張家口1日・チンタオ3日・天津2日と決めた。宿泊代については北京は友人宅でもあり、一応は無料だ。張家口は200元、チンタオは160元、天津は80元である。それぞれに価格差があるのは、あとで詳しく述べたい。

 かくして、ほぼ準備は整った。あとは身の回りの携行品を決めるだけだ。夏場ゆえ着替えも軽く、最も小さな旅行バッグに決めたが、何を入れるかはこれまた面倒なものである。このズボラさが、のちのち身に降りかかることを改めて知ることになる。
 
 成田空港までは家から1時間30分ほどあれば充分である。余裕をもって到着しノースウエストの受付に行ったら、乗るべき飛行機はすでに満席で、窓際とか左や右の指定もできない。とにかくわたしの座席は一つしかなかった。左右に通路のある真ん中の座席で、右側では20代そこそこの若いギャルたち数人が姦しく騒いでいる。左側には妙齢の女性が少し遅れて着席した。
 だが、イヤホーンをつけて熱心に音楽でも聴いているの様子だ。姿かたちからは中国人のように見える。でもこりゃあ、アカン ! 対話は不可能に近い。仕方が無い。 北京までの3時間は居眠りに徹することにした。神様はオッサン(いや、おじいさんかな)にも、ちゃんと味方してくれるものだ。北京到着以降は「非常愉快的時間」を過ごすことになる....。(つづく)
                                              
                                             (C・W)