<竹炭との出会いそして竹炭への挑戦>

   1) 竹炭との出会い                                   

     第二の人生を迎えてから私の酒へのこだわりは<酒を飲むというより酒を楽しむ>の方向に転換

    しました。年とともに酒量が落ちたことが原因です。今後も酒は飲むことだけに執着するといつし

    か酒に飲まれることになるだろう。いつしか酒に身体を蝕まれることが分かっています。そうなっ

    ては遅いです。酒に飲まれ、酒に侵されてから酒に遠ざかることは絶対に避けたいと思いました。

    対策として考えていたことは酒を飲むことを主目的にするのではなく、酒を楽しんで飲むこと。酒

    を通じて知らない世界に入り込み新しい出会いを求めること。そして酒と楽しく一生涯付き合いた

    いと思い<「地酒ヒューマンズクラブ」>を友人と相談して立ち上げました。焼酎、ビールに押さ

    れ気味で倒産やむなし気配の日本酒です。大手メーカーにもこの危機を察して凛とした酒はありま

    すが、地方の中小酒造会社は大手以上にその危機感は真剣で<手抜きしない、こだわりの旨い酒>

    で勝負しています。全国に3000以上あった醸造会社が次々に姿を消し2000数社となってしまった現

    在、今からでも遅くはない、販売量より酒質にこだわったうまい地酒を紹介して欲しい、また集ま

    った仲間にも紹介したい。スローライフの第二の人生を目指している私は<旨い酒―米の旨さを引

    き出したこだわりの酒>を飲みたい―そんな考えが高揚し「地酒ヒューマンズクラブ」を立ち上げ

    ました。自己紹介でも書きました。目標を確かなものにすると、不思議に新しい人と人との出会い

    が芽生え始め、道が開けました。うまい地酒を探して全国を旅している人との出会いが芽生え始め

    その方を介して美味しい地酒を販売する酒店主を知り、新聞に掲載されたおかげで造酒道具を集め

    ている方を知り、その方を介して杜氏さんを知り、杜氏さんを介してうまい酒肴を知り・・・「地

    酒ヒューマンズクラブ」は順調に会員を増やし二ヶ月に一度の例会はユニークなイベントの企画を

    展開しながら全国のうまい酒を紹介していただき飲んでいます。イベントとはあるときは雅楽を聞

    きながら、あるときは油絵の描き方を教わりながら、あるといはモーツアルトの曲を聞きながら美

    味しい酒を飲んでいます。そうしたイベントの一つとして<竹炭焼き>を成功させた名人が紹介さ

    れ、苦労話と作品を鑑賞しました。竹炭の窯つくりから始まり竹の準備と乾燥、窯への詰めと焼成

    ・・を教わりました。大変な苦労の末の作品も鑑賞しました。竹炭は協力者が必要です。その協力

    者も無償が必須です。ボランティアの募集、集まったボラティアの面倒・・そんな話を聞いた私は

    竹炭に興味を抱きましたがとても挑戦する対象でないことを痛感しました。今から三年と少し前の

    話です。 

   2) 竹炭への挑戦   

     挑戦したい事柄から一旦除外すると消滅し見向きもされないのが通常です。それが不思議に再び

    眼の前に現れたのです。縁があったのでしょう。手紙で温度管理とか竹炭の話を聞き、何となく焼

    き物と重ね合わせるようになりました。陶芸の素焼き温度は600〜700度です。備長炭など硬い炭焼

    き温度はさらに高温焼成ですが、竹炭なら素焼きの温度の範囲内です。窯を開けると焼き物と竹炭

    が同時に出てくる?!面白い。素晴らしい。魔法の窯・・私の挑戦意欲は小躍りし高揚していきま

    した。そのころ竹炭ブームでドラム缶による竹炭つくりが時々新聞に掲載されていました。手軽に

    竹炭つくりが出来ることを知り、私の竹炭挑戦をさらに煽り立て、実現のための問題点を整理し可

    能性を探りました。今から三年前のことです。   

    

    問題点の整理

    @ 陶芸窯でガス炎が竹に接触しないか?

      陶芸は炎の芸術、炭焼きは蒸す、いぶして焼く芸術、基本的な違いがあります。同時焼成なら

    これを解決する必要があり、竹炭名人からアイデァをいただいた、アルミ缶に籾殻を入れ、その

    籾殻の中に竹を入れる蒸し焼き方法を教わりました。私の窯はガス窯です。この方法でガス炎が直

    接入らないで竹を炭化させることを確認しました。

    A 焼成時間は?

      素焼きは6〜8時間です。竹炭は窯の大きさ、種類によって異なりますが、本格的な土窯なら

    3日+α日、鉄釜、ドラム缶は半日+αであることを知りました。短時間炭化は炭質に問題があっ

    てもそれは後の課題として焼成時間は素焼き温度で可能であることを確認しました。

    B 焼成温度は?

      素焼きは600〜700度です。文献資料によると竹炭の焼成温度は大体内部温度で400〜600度です

    800度〜1000度が限界らしいです。これなら素焼きの温度範囲に入っています。

    

    陶芸窯による竹炭焼きが理論上可能であることを確認した私のその後の行動は猪突猛進、相撲で言

   う電車道でした。今度は実施することを前提に竹と籾殻の確保に奔走しました。

   @ 竹の確保

    古くか住んでいる地元の友人を探しました。すると<親戚に竹林を持っている人いる。毎年竹が伸

   び、伐採で困っている。欲しいなら喜んであげますよー>との返事。車で10分ほどで竹林があると

   いう。すぐさまお願いしました。

   A 籾殻の確保

    籾殻は大変でした。ヒョウタンと同じ手話サークルの仲間に相談しました。数名<いいよ。あげる

   よ>との返事でしたが、いざ取りに行くと<畑に入れなくてはならない><すべての農作業が終わっ

   てから>と目の前の籾殻は見るだけで戴けませんでした。あきらめていると<私は農家ではないが、

   友人に農家の人を知っている。話してあげる>と言う人が現れ、お願いすると<どのくらい必要なの

   ?量によるがわずかなら今でもOK>とのありがたい話。<家庭用のごみ袋で二つか三つでいいよ>

   というと<そんなに少なくてよいなら明日にでも来て!>早速もらいにいきました。

    竹と籾殻がこんな経過で早く調達できようとは、夢にも思っていませんでした。

    窯を開けると焼き物と竹炭が出てくる。夢のような話です。これは日本最初の出来事になる。挑戦

   する価値は大いにある。私は驚喜しうれしい誤算を一日も早く実現させるために奔走しました。当初

   は籾殻以外の落ち葉、湿った籾殻、乾いた籾殻、詰め方がわからず試行錯誤しました。何とか作品が

   出来たのは昨年の夏、1年前です。そのときの秋11月、作品を初めて山添村の文化祭に出品しまし

   た。竹炭名人に賀状で報告しました。第二回目の出品は今年の四月中旬です。奈良の榛原町の趣味展

   に展示しました。焼成仕様はまだ完成されていません。したがって失敗が多く成功率は少ないので作

   品数、作品種類は少ないです。

    第4番目に紹介する竹炭は未完成ですが、日本初の挑戦に一応の成功の兆しを得た私としては満足

   です。今後技術を極め作品は続報として紹介していくことを条件に半年ほどの作品を紹介します。        

                                                           

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