錦秋の候 南東北を巡る



                                                ライター 千遥
        
 例年のことながら、10月から11月にかけては、日本国内まさに何処へ出かけるか戸惑うほどの紅葉や黄葉の季節である。
 紅葉は9月北海道の大雪山を手はじめに始まり、徐々に南下する。紅葉の見頃の推移を桜前線と対比して「紅葉前線」と呼ぶそうだ。紅葉が始まってから完了するまでは約1か月かかる。見頃は開始後20〜25日程度で、時期は北海道が10月、東北地方が11月、その他の地域は11月から12月の初め頃になる。
 ただし、山間部や内陸ではこれより早いし、その年の夏の気温などにも影響をうける。桜の名所といわれる地元の方は、秋の紅葉予測に関してもこの辺の事情には相当詳しい。

 昨年の上高地に続いて、今年も紅葉見物へと出かけた。地元の「いこう旅の会」という旅好きな方々との同行である。貸切りバスによる顔見知りの方ばかりだから、気安く行ける。今回は、10月の24日から25日にかけて、1泊2日。「南東北秋ものがたり2日間」と称する旅である。まずは東北高速道を走り那須塩原で休憩し、チーズガーデンでチーズケーキの試食だが、試食に止まらず何
点か購入してしまう。家族や孫の顔を浮かべて、買いすぎないように心がけしているのだが、なかなか上手くいかない。バスから降りないことが大きなポイントであることは承知しているが、そうもいかない。

 一日中曇り空で好天とはお義理にも言えないが、「暑くもなし寒くもなし」である。高速道から一般道へと切り替えながら、大内宿に着く。ここは妻籠宿と同様に昔ながらの茅葺宿の家並みだ。家の軒先でおばちゃんたちが販売されているものは、農家の方々による手作りの品々である。へたに買い物をしてしまうと、「狭い家で飾るところもないよ」とお叱りをうけることになる。
 そんなことで申し訳ないが、見るだけで済ませた。

 
 
    
那須の「ザ・チーズガーデン五峰館」は御用邸ブランド 強力な援軍だ

 

       
大内宿の産品は 全てが手作り 手の込んだ品物が多い



 大内宿とは一体どの辺にあるのか調べていたら、何とおっちゃんが戦後高校を出るまで育った栃木県今市市(現日光市)に縁のあることが分かった。東京方面から東武電車で行くと、今市市から日光方面と鬼怒川温泉方面とに分かれる。この鬼怒川温泉方向への道は、川治温泉や五十里湖を抜けて会津若松に通じる。以前は娘たちと共に、会津高原スキー場へも通った道である。今でも会津西街道と呼ばれたり、別名の下野街道とも呼ばれる。

 全長約450メートルの街道に沿って、道の両側に妻を向けた寄棟造、茅葺の民家群がほぼ等間隔に建ち並んでいる。バスがたくさん並び観光客も多い。時間がないので、この大内宿の全体像はなかなか撮れない。
 1981年、伝統的建造物群及び、その周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているものとして、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。宿場町としては、長野県の妻籠宿、奈良井宿に次いで、全国で3番目である。
 たまたま、この宿場町全体を写した著作権放棄の画像を見つけたので、それを下面に載せたい。

      

    
好天ならば こんな写真も撮れたかも      ウィキペディアより 著作権放棄画像



 大内宿を出ると、バスは高速道をひた走る。栃木県から福島県を抜けて宮城県の仙台近く、白石から本日の宿泊先である遠刈田温泉を目指す。この温泉の名前「とおかった温泉」は、隣席の博学者から教えて頂いた。情けないが、おっちゃんには読めなかった。

 途中、起点の福島県南会津郡下郷町大字塩生から 、福島県西白河郡西郷村大字真船にかけての国道289号線(全長 : 23・3キロ)に、長さ4345メートルの甲子トンネルがある。昨年の9月21日に開通したもので、ちょうど1周年になる。この「甲子トンネル」も普通は読めない人が多いだろう。これは「かし」と読む。隣りの博士に教えてもらった。見た目は易しいが、読むのは意外と難しいのが日本語には多い。つぎに来る機会があったなら、そしてボケて忘れなければ、おっちゃんも漢字博士を名乗れる存在となっている可能性があるかも知れない。

 片側1車線の甲子トンネルを出ると、視界全体が紅葉の山々になる。バスは右に左に揺れながら山腹を降りていく。やっと平坦なところに出てホッとした。それから遠刈田温泉に向う。車窓からときどき遠刈田という地名が見える。やれやれ着いたか、と思ったら大間違い。晩秋の日暮れは早い。すでに見渡すかぎり暗闇となった道を、蔵王連峰の中腹にある今夜の宿に向うのだ。

 麓から800メートルの高さにあるという宿は結構遠い。日光のいろは坂のように、左右にクネクネと曲がりながらバスは進む。だが、宿の明かりらしきものは見えない。
 やがて光の輪が横に伸びているのをみたとき、宿であることを確信した。運転手さん、本当にお疲れ様でありました。到着時間が遅れたために、30分後から宴会が始まる。

 ビールやお酒でご馳走を食べていたら、早々とカラオケが始まる。つぎから次へと歌い手がいるから、カラオケ苦手のおっちゃんは指名が来なくて助かった。 

 

           
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     この宴席で教えてもらった楽しい歌を、ご披露しましょうか。

       その題名は「ボケない小唄」。お座敷小唄調で歌いましょう。

     
1.♪ なにもしないでぼんやりと テレビばかり見ていると
               のんきなようでも年をとり 十年早くボケますよ

     2.♪ 仲間はずれでただ一人 なにもやることない人は
               夢も希望も逃げてゆき 年もとらずにボケますよ

     3.♪ 酒もタバコものまないで 唄も踊りもやらないで
               人のあらなどさがす人 人の三倍ボケますよ

     4.♪ ゴルフ カラオケ 釣り将棋 趣味のない人 味もない
               異性に関心もたぬ人 友達ない人ボケますよ

     5.♪ 風邪を引かずによく食べて 足腰きたえて 早寝して
               頭つかっておしゃれして 根性持たなきゃボケますよ 




 
翌朝7時にバーベキューの食事を摂り、30分ほどで蔵王のシンボル御釜のある刈田岳に着く。小雨が降り、靄がかかっていた。防水ジャンバーを着て外に出たが残念ながら何も見えない。山の天気は、予測が難しい。こんなものなんだろう。と、お釜は諦めざるをえなかった。
 断崖に囲まれた直径330b、最大水深25bほどの円形火口湖は天候に応じて新緑や茶、コバルトと色が変化すると言われる。たまたま訪れて最高の景観を拝めるとは、虫が良すぎるものか。

  
  

              残念無念 何も見えなかった 蔵王御釜


 帰路の坂を下りた途端に雲も霧も消えうせた。一瞬にして、絶好の秋晴れとなったのだから山の天気は真に変わりやすい。
 帰りの高速は東北道を予定していたが、運転手さんの機転で、いわき市まで直行し常磐道経由で地元鎌ケ谷へと向った。これが成功し、殆ど渋滞にあわずに順調に起点の市役所に到着した。

 それにしても米沢から裏磐梯を経由しての、山あり谷ありの紅葉真っ盛りの景観は真に見事としか言いようがない。こんなとき、日本に生まれてよかったなぁ、と心から思った。同乗者の皆さんからも感嘆の声が途切れぬほどの美しさを堪能させてもらった。
 昔の人は、よくぞこんな山の中に道を切り開いたものと、つくづく先人の偉大さを思ったものである。
今回最後の目玉は米沢市の上杉神社と、天地人博の上杉博物館。直江兼続で観光客で潤う米沢市。立派な米沢市上杉博物館は数々の歴史上の資料が残る。
  
 しかし、平成21年1月にオープンした「天地人博2009」も、22年の1月11日で愛と義の伝国の杜も閉じる。米沢の民間広報誌は、もともと米沢人は観光に関してはとても下手で、「来るものは拒まず」ありきで、自発的的にアピールしたり、アイデアを出したりしていくことがとても苦手と言う。
 天地人を一過性に終わらせてはならない。と、反省している。来年以降の観光を考えると、またまた、お寒い観光米沢になるのは必至と書いてある。

 今年のブームに浮かれずに、先を考える方々がおれば、先祖の苦労を乗り越えていけるものと思った。

                                       (C・W)




                  
  おまけ

      

      

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観光客で賑わう五色沼