囲碁文化史アラカルト(19)
                          書家・柳田泰雲
                                                   小川 玄吾


 市ヶ谷の日本棋院の玄関を入ると、左手の壁に古い雑誌に囲まれて、泰雲自筆の
流麗というか品格高い「囲碁十訓」の額が掲げてある。戊申夏日(1968、昭48)
とある。今日は是を紹介しよう。

       囲碁十訓

      正心慎身    心を正しく身を慎む
      虚己臨戦    己を虚しくして戦いに臨む
      対盤厚礼    盤に対しては礼を厚くす
      下子沈静    子を下すに沈静
      攻防究精    攻防は精を究む
      活殺含真    活殺は真を含む
      時入虎穴    時に虎穴に入る
      敢莫猪突    敢えて猪突するなかれ
      是機応変    是れ機変に応ず
      玄遠無窮    玄遠にして無窮

泰雲さんといえば、日本棋院の有段者の免状の執筆者であり、秀行さんの書の先生である。
囲碁に関しても造詣が深かったようである。

柳田家の書業は江戸時代の儒学者である初代正斎に始まり、二代目泰麓により確固たる
地位を築くに至った。

三代目泰雲は、明治35(1902)生まれ、幼少より父の教えを受け、古典に根ざした
書道の研鑽を積み、泰雲書法として動かざる書業を完成させた。
その業績は現代のわが国書壇のみならず、海外へも影響を与えた。特に中国の建国
四十周年記念では、四十点もの作品を中国に寄贈。泰安市にある中国第一の霊山
「泰山」の山頂には、外国人として初めての摩崖碑「国泰民安」が建立された。
1990年(平成2)中国で客死したのも、中国との縁であったか。

四代目泰山は、父泰雲の書法を継承し、「書の真髄は泰雲楷法にあり」という真理を
伝承しつつ、更に独自の書法を模索している。

八ヶ岳泰雲書道美術館には是非一度足を運んでいただきたい。

                         
                                          参考文献:Wikipedia他