囲碁文化史アラカルト

  囲碁文化史アラカルト(11)仙人の打った碁「爛柯」(らんか)    

                                                         小川 玄吾

     爛柯は囲碁の別称である。爛は腐る柯は斧の柄である。樵が碁を見ているうちに、持っていた斧の柄が腐ったという昔話が由来である。

     晉の中期、河南省新安の田舎に王質という樵が住んでいた。王質は近くの石室山で二人の童子が碁を打っているのに出会う。その碁があまりに面白いのでつい見とれていた。童子のくれた棗の実を食べるとお腹も落ち着き、時が経つのも忘れて観戦した。ふと気がつくと斧の柄が腐っているではないか。不思議に思い王質は山をおり家路についた。ところが自分の帰るべき村が見当たらない。すっかり様変わりしてしまっていたのだ。後でわかったことだが、何と百年も時が経っていたという。

     この仙人譚は、南朝「梁」(502−557)の時代、太守となった任ムの撰による「述異記」にある。晉は春秋時代の国の一つで、BC770からBC376に栄えたので、この話は何と紀元前5世紀頃のお伽話である。

     これに符合するがごとくに「爛柯図」なる棋譜がある。勿論これは偽作で、後代に何人かのしゃれ心からつくられたもののようだが、かなり高度の棋力レベルにある。局面の進捗は接近戦の力碁で、誠に三昧境に引き込まれる。下記に2譜紹介するが、黒一目勝ちとある。是非並べていただきたい。

     第一譜:1〜100手。●36:5の十二、○43:7の十六、○65:7の十五                           

     第二譜:101〜200手まで。以下略。○16の四、7の十六はヌカレ。○19:17の四、○23:17の四、○65:13の十四.

第一譜:1〜100手。 第二譜:101〜200手まで。

   参考文献:安永一 囲碁百年(1976)他