囲碁文化史アラカルト

    囲碁文化史アラカルト(8)囲碁格言食べ歩き

                                                   小川 玄吾

ご要望もあり今回は囲碁格言を取り纏めてみよう。昔から囲碁格言は碁の基本的な原理原則を示したものが多く、対局上の心得から駄洒落まで人間模様を描き出した楽しいものといえよう。

(1)   原理原則にかんするもの

「二立三析」「一にアキ隅二にシマリ(またはカカリ)三にヘン」(四にツメ五にトビ)「ツケにはハネよ、ハネにはノビよ」「二目にして捨てよ」「一間トビに悪手なし」「二目の頭見ずハネよ」「死はハネにあり」「1の二に妙手あり」「追うはケイマ逃げは一間」「カタツギ、カケツギ、ケイマツギ」

(2)   原理原則にも、少々抽象的な言い回しのものがある。囲碁十訣はその最たるものか(省略。囲碁文化史アラカルト2を参照)「厚みを囲うな近寄るな」「碁は断にあり」「敵の急所は味方の急所」「隅には魔物が住む」「広い方からカカれ、広い方をオサエよ」「固い石には近寄るな」「枝葉を攻めて攻め合い負け」「攻めは最大の防御」「一方地に勝ちなし」「利かしと悪手は紙一重」「一方高ければ一方低く」

(3)   力がついて棋力が向上すると、打ち方の助言指針はあまた。「要の石は捨てるべからず」「切った方を取れ」「キリチガイは一方をノビよ」「サバキ許さぬブラサガリ」「目あり目なしは空の攻め合い」「攻めの基本はカラミとモタレ」「大模様消すはボーシと肩ツキ」「一線に妙手あり」「一路隣が本筋」「鬼より怖いダメヅマリ」「板のシメツケ避けるべし」「先手先手が後手のもと」「ノゾキにツガヌ馬鹿はなし」「死んだら動くな、死んだら化けろ」「トビコミ、ハネコミにに妙手あり」「二間トビにはおおかたキリあり」「二段バネ元キリ注意」「コウは小さいところから」「シチョウ知らずに碁を打つな」「上手コスまず下手コスむ」「三手ヨセコウ、コウにあらず」「手数をつめるホーリコミ」「3三打って憂いなし」「ハネを忘るな三手抜き」

(4)   打ってはいけない格言、これは心すべきか。「観音ヒラキ」「タケフの両ノゾキ」「アキ三角」「陣笠作って馬脚出す」「集三集四」「団子石を作るな」「兄弟喧嘩は身の破滅」「取ろう取ろうは取られのもと」「アタリアタリはヘボ碁の見本」「損コウ打って碁に負ける」「三隅(または四隅)取られて碁を打つな」「カス石逃げるべからず」「車の後押しヘボ碁の見本」「ノゾキにツグ馬鹿ツガヌ馬鹿」「ウッカリするな尻尾ヌケ」

(5)   数字が直接ついたもの、これはきわめて具体的。「六死八生」「ワタリ8目」「大ザル8目」「ポン抜き30目」「今も廃らぬ一、三、五」「シチョウ伸びだし7目の損」「両コウ3年柿8年」「ハネツギ6目」「ハネを忘するな三手ヌキ」「第三線は四死六生」「5線6線みだりにオスな」「クシ六は生き」「亀の甲60目」「中手の九九(三3、四5、五8、六12)」

(6)   盤外編。「碁打ちは親の死に目に会えない」「岡目八目」「石飛んで其の碁に勝てず」「歌は碁のごとく詩は将棋のごとく」「酒は別腸碁は別智」「碁を打つより田を打て」「囲碁双六は四重五逆の悪事」「碁に勝って勝負に負ける」「ワタル世間に悪手なし」「碁は運の芸なり」

(7)   余談。詰碁の古典「玄玄碁経」は、それぞれの詰碁に全て題字がついている。日本で有名な「石見重太郎の牢破り」の原題は「明珠出海」(光る真珠が海を出て行くの意)である。中でも私が気に入っているのは、「典琴涸酒」(大事な琴を質に入れてその金で飲酒を楽しむの意)である。さて皆さんどんな詰め碁の形を想像されましょうか。尚それぞれの格言の盤上での姿については下記文献を参照されたい。

   

       参考文献:格言小事典 日本棋院 (1994.4.初版)他