囲碁文化史アラカルト

  囲碁文化史アラカルト(7)小宇宙詰碁の世界で遊ぼう

                                                   小川 玄吾

     19路盤の対局を大宇宙とすれば、詰碁の世界は小宇宙といえよう。

     詰碁は、手筋、手順の宝庫で、棋力の向上に役立つことは勿論であるが、

頭の体操、睡眠薬または覚醒剤としても格好の薬剤である。 

     今回は、中国と日本の詰碁の名著(古典)を4冊紹介しよう。

「玄玄碁経」宋代(960〜1127)に晏天章と厳徳甫により纏められた。 

   元代の至正7年(1347)虞集により再編された。

   囲碁全書で、論説、定石、布石、詰碁を網羅している。

「官子譜」万暦年間(1573〜1615)の詰碁集。過伯齢が原著者。

   清の陶式玉が1690年に再編した。原本は1478題におよぶ大作。

   (官子:部分的仕上げ、決着の意)

「囲碁発揚論」名人4世井上因碩(道節)の著書。正徳3年(1713)に

   完成した。別名「不断桜」。オリジナル作品が多くかつ難解。全180

   余題。井上家では、本書を門外不出とし、少数の高弟のみが閲覧を許されたという。

「碁経衆妙」林家十世林元美(爛柯堂主人)の著書、文化8年(1811)版本

   4巻。実戦型に則した易しい問題が多い。約500題。

     プロ棋士はおおかた詰碁を作っているが、詰碁作りで評判のプロは、関西棋院総帥だった故橋本宇太郎九段、日本棋院故前田陳爾九段である。張栩名人はその道でも有名。

     「詰碁を楽しむ会」というのがあって私も会員だが、季刊誌を何時も楽しみにしている。

この会の有力メンバーの一人に、塚本恵一さんという詰碁作りの愛好家がいる。

「算月」という詰碁の本まで出版している。アマだが、日本棋院の石倉昇九段が東大囲碁部キャップテンをしていた当時、京大囲碁部のキャップテンとして活躍されていた方と聞いている。

       参考文献:高木祥一解説 官子譜、碁経衆妙など(1995〜96)