俳句と私

俳句と私
                                                          小川 玄吾

 私と俳句(1


 外はすっかり花と若葉の季節となった。ジャガイモの芽が出揃い、茄子や胡瓜の床造りなど、土いじりがまた楽しい。
「晴耕雨碁」ならぬ、「碁又碁合間耕」だが。


       白や黄や 花菜畑は 耕やさず    玄良

 採り残した畑の一画は毎年こうなる。白は大根、黄は菜っ葉類。中でも、ブロッコリーの淡い黄色はなんとも優雅である。

 自然の摂理には感嘆する。植物が芽を出し、あるいは花をつけ、ある時間の感覚を経た後に、虫が現れる。これが逆だったら、虫は食べ物がない。虫のなかで、最初に眼に写るのは蟻である。


       蟻百歩 地球の広さ 知らぬまま   玄良

 小川さんについては、今更ご紹介するまでもないが、平成9年より6年間、日本郵便碁愛好会会長として、める碁論争に一区切りをつけ退任された。囲碁はお父上から学ばれたが、高校、大学(東大農学部)時代はテニス、ゴルフに精出し、俳句の会にも足繁くといった具合で囲碁に打ち込まれたのは30歳始めとか。現在、囲碁教室で子どもたちの指導にも当たっておいでとのこと。(2005.5.10)



私と俳句(2)

      夏素麺造る機屋に海の照り

これは、私がまだ製粉会社に在職中、小豆島の素麺製造業者のところへ、技術相談兼見学で訪問したおりの作句である。一昔前手延素麺の製造は冬であったが、今では設備環境が整い夏でも製造している。
手延素麺の製造は、深夜に始まり終日の重労働であったが、生
地の捏ね上げ工程の分業も進み、昨今はさほどの過労働でなくなった。

手延素麺の製造装置は随所に機織機が用いられていることから、工場を機屋(はたや)と呼ぶことがある。夏が来ると、小豆島を思い出す。

ところで、囲碁用語で、ハザマを空けて打つ「チキリトビ」というのがあるが、この語の由来も機織機の部品からきているという。瀬越憲作氏の命名ときく。


      倒伏の玉ねぎ地下に力溜め

玉ねぎの名産地として、小豆島の隣の淡路島が有名だが、この句は、我が家の家庭菜園の賜物である。一年発起して玉ねぎつくりに挑戦。先ず近所で農業に従事している小学校の同級生に助言してもらい、生育書も精読した。九月に種を蒔き、十一月に移植、元肥はリン酸成分を多めに、二月までは追肥、除草などのかいあって、三月には青々と逞しく育った。五月に倒伏、その後も地下球は膨らみ、根本の枯れた六月の初めに丸々と育った玉ねぎを収穫して納屋の軒に吊るした。二百個余ばかり。(2005.6.28)