手作り電気自動車事始
その高く張り出した座席から見る一本の道は、白く乾き北へ一直線に伸びている。
襟裳岬北西の浦河と旭川間161キロを結ぶ国道237号線である。
紺碧の空は、雲ひとつない快晴。気温-7度。
ほとんど積雪のない、両側の田園風景は、まさに小春日和である。
隣でハンドルをにぎるは、美瑛のお姉さん。
後のまどの向こうには、わが愛車「EVサンバー」が見える。
スバルの軽自動車の改造版である。
今年の春に全面塗装して若草色である。
2年前の12月に初めての車検を受けた。
早いもので、きょうは、いよいよ2回目の車検日である。
けさまで、この日のために愛車の点検に明け暮れた。
2年前に初めて電気自動車として受けた登録検査とはまた違った緊張である。
これまでに3000キロ走行。
ランプ点灯確認、ブレーキ点検、足回り点検。
12ボルトのバッテリーあたり16ボルトで充電・・・
とはいっても、楽しんだといったほうが正確だ。
一番気がかりは、気温である。
バッテリーの能力が落ちるからだ。
気温30度の場合、放電容量を100とすれば気温0度では、80強。
実感としては、70程度に感じられる。
車検場までは、35キロある。
自走した場合、検査前に要充電となり、これは難しい。
そこで、いつもお世話になっている、お姉さんにキャリヤーカーで、車検場まで運んでもらうことに相成った。
わたしは、これまでに「ユーザー車検」を受けるのは10回程度あるが、いつも緊張することに変わりはない。
4トントラックの振動のなか、彼女とお話をし、ドライブを楽しんでいるうちに、わたしの心も大分落ち着いてきた。
きょうびの世界は、車を作る側と買う側の関係が完全に固定化されてしまっている。
「車を買う」と言うよりも、「買わされる」といったほうが、本質を言い当てているかもしれない。
ユーザーにとって車の内部は、ほとんどブラックボックスであるし、作る側と買う側の世界がほとんど断ち切られている。
こうした関係はもっと多様であるべきだ。
多様性は発展の力である。
電気自動車の報道と関心は、この10年で急速に高まってきた。
事実わたしも、時速400キロ以上で、疾走する電気自動車に仰天した。
ガソリンは、いつまでもあるわけはないことは自明。エタノール、天然ガス、水素ガスなど登場してくるだろう。
しかし、内燃機関にこだわることもない。
わたしが手作りで電気自動車をつくったのは「こうした多様性の試みの中に、将来のひかりを見つけたい」といいたいが、遊びと思えば気も楽である。
つづく
中村倶和