チンタオ(中国)からのたより Part4


                   

今週の週末に日本から友人が来ます。日本の話が聞けるのを楽しみにしています。
渡辺千里さんも仕事を早く片付けて、どうぞおでかけください。
 

☆私の日記W(6月10日)

  向こうから二階のおじさんがやってくる。
いつも洗濯物を落とすおじいさんの息子さんだ。両手にビニール袋をぶら下げている。片方に饅頭がいっぱい。
もう片方には野菜が入っている。お昼ごはんの買出しだ。

「ご飯食べましたかー」

  うれしいなあ、昔ながらの挨拶だ。「ニーハオ」なんていうよそ行きの挨拶じゃないよ。
これが中国四千年の庶民の挨拶だ。生活感がにじみ出てる。これからですよー。

  八百屋に入ってまずトマト。大きな籠の中からよさそうなのを選んで8個。上の棚の人参を2本。
その隣にナスがある。30センチもある長いのを2本。今日はキャベツと玉ねぎにいいのがないからやめよう。
合計3,4元。やっぱり安いなあ。

  八百屋のはす向かいの路上にワンタンの屋台がある。私の姿を見ると、おばさんがすかさず鍋の中にワンタンを入れる。忘れないうちに1,5元を先払いして席に座る。席と言っても銭湯の洗い場にあるような小さい腰掛だ。

  折り畳みのもあるよ。床机というのかなあ。おじさん、おばさんたちがいつもこれを持ち歩いている。
これに座って、庭で野菜の皮をむいたり、夕涼みをしたり、井戸端会議なんかをするんだ。便利だよ。
  屋台のテーブルは四角い台だ。これも大きさがまちまち。どこかで拾ってきたんだろう。四つある。
おじさんがそろりそろりとどんぶりを運んできた。普通はセルフサービスだけど、お年寄りは危ないからな。何しろ坂道だし、どんぶりにはスープがいっぱいだ。

  ありがとう。
大きな木の下だからちょうどいい日陰だ。風通しもいい。外だから当たり前か。
少しずつ席が埋まってきた。みんな八百屋さんで買ってきた饅頭をかじりながらワンタンをすすってる。スープ代わりだ。漬物持参の人もいるよ。向こうではビールのラッパ飲みだ。コップなんか置いてないからな。
  いいなあ。飾りっけなんかないよ。気取らなくていいんだ。これが生活なんだなー。「ご飯食べましたかー」の世界だ。
  食べ終わって立ち上がると、

「食べ終わったかい」と、おじさん。
「老大爺」と、おばさん。

  「老」と言ったって老人の意味じゃないよ。尊敬と親しみをこめた「老」なんだ。
このままアパートに帰ってもいいけど、やっぱりちょっと海を見て行こう。右へ曲がって坂道を50メートルも下がればすぐ海だ。
  ちょうど引き潮だ。干潟が広がっている。満潮の海はよそよそしいけど、干潮のときは海の底をさらけ出してざっくばらんだ。

  このままアパートに帰ってもいいけど、やっぱりちょっと海を見て行こう。右へ曲がって坂道を50メートルも下がればもう海だ。
ちょうど引き潮だ。干潟が広がっている。満潮の海はよそよそしいけど、干潮のときは海の底をさらけ出してざっくばらんだ。

  朝のうち天気が悪かったから人出はまばらだ。おばさんがおもちゃのバケツと熊手を持って売り歩いている。みんな手ぶらで来てるから買いますよ。折角干潟が広がってるんだ。貝ぐらい掘らなくちゃあね。
  潮干狩りは、行くまでは「あんなもの」なんて思ってるけど、いざ始めるとみんな夢中になるんだ。どこの国でも同じだなー。
おっ、こっちでは若い女性が3人、向こうを向いて貝を掘ってるよ。最近のファッションはしゃがむと背中が丸見えだ。背中というよりほとんどお尻だな。

「双眼鏡、要らない?」

  なんだ、また双眼鏡か。お尻を眺めているときに双眼鏡なんて、タイミングがよすぎるよ。

「50元でいいわよ」

  安いけど、もう買っちゃったんだ。要らないよ。
さあ、今日は夜の授業があるんだ。体力を温存しなくちゃ。

  帰って昼寝だ。
 
                                                    青島市   足立吉弘