冬の大連 かけ歩き
 part 2

                                                       
ライター 千遥

  前回、中国でのコピー商品購入は明らかに違法であるのに、現地の中国人ガイドは、あえて我々をコピー商品専門店に連れて行ったことを書いた。この件に対する旅行会社からの回答は、3週間ほど経ってから書面によって送られてきた。
  店頭に陳列されたニセブランド品その内容はあらかじめ予測したとおりだった。逃げ口は一つしかないのだ。事実は間違いなく当方の指摘したとおりである、と会社側は真面目に謝罪した。
  そして担当した現地ガイドを3週間の営業停止処分にし、日本において再教育する、とのことであった。また、ガイドが客をコピー店に連れて行ったことに関してはうまい弁明があった。「客の女性から頼まれて仕方なく連れていった」というのである。しかし、以後このようなことはしない、との回答であった。
  それ以上の追求はやめた。コピー大国といわれる中国では、政府公安当局がコピー商品の販売を公然と見逃していることは明らかであるし、中国旅行担当といわれる責任者のクレームへの対応もまた良かったからである。

  ガイドは40歳代の男性である。ちょっとなまりがあったが、まず間違いのない日本語を話す。彼と日本語とのつながりは、「彼の祖父が満鉄の副社長の秘書だった」からだという。ガイドの仕事を始めるにあたっては、東京・阿佐ヶ谷にある会社の寮に泊まりこみ、毎日のように近所にある「吉野家の牛丼」を食べに行ったという。それは彼の好物になったようである。

  ツアー旅行と一人旅では、私は一人旅を選ぶ。好きなときに何処にでもいける気軽さがある。今回は意に反してツアーだったけど、それなりの良さがあった。真冬の閑散期で費用が極端に安くついたこと、それなのに中身は繁忙期における高価格の内容と何ら変わらぬ充実さがあったことである。



ホテルの室内
全国旅遊星級飯店評定委員会の金属プレート NHK衛星放送
マウスを当てると画像が変わります 全国旅遊星級飯店評定委員会とある
(クリックすると拡大画像が表示されます)
 NHK衛星放送


  宿泊先は五星級で大連市内最高のホテルであった。大連には五星級のホテルは一つしかない。かつて中曽根、竹下、村山などの歴代首相が宿泊した大連賓館(旧ヤマトホテル)も今や三星級ホテルである。
  室内は、相撲取りも楽に寝られるような巨大なベッド、応接セット、机、テレビ、冷蔵庫などが完備されている上に、浴槽やシャワー、洗面台なども超一流であった
さらに恵まれたことは、二人一部屋が原則なのに相室となる筈の方がキャンセルしたらしく誰もいない。それで私1人が悠々と広い部屋を占拠できたことだった。

  テレビは大型でphilip社製品。チャンネルは、中国中央電視台(中央テレビ)など複数の中国国内放送のほかに米国や日本の放送も見られる。NHKの衛星放送は一つだけだが、大相撲も楽しむことができる。

  大きなホテルだけど、日本語を話すフロントマンは見かけなかった。しかし従業員は皆、洗練された接遇である。大連は5月の末にはアカシアの花がいっせいに咲く。市の花は勿論アカシアである。大連国際ウォーキング大会も予定され、日本ウォーキング協会も協賛している。
  この時期に是非来たいと思い、フロントのお姉さんに5月の宿泊代はいくら位か尋ねてみた。彼女は788元とメモに書いてわたしてくれた。日本円で10,000円ちょっとだ。面白いのは予約は私の携帯にして、と自分の携帯電話番号を教えてくれたことである。バーの指名料みたいなもので手数料が彼女に入る仕組みなのかなぁ。



海鮮料理1 海鮮料理2 海鮮料理3 海鮮料理4

       
海鮮料理5 大連名物 海鮮料理の数々 海鮮料理6

大連名物 海鮮料理の数々

 大連といえば海鮮料理となる。上記の写真は第1日目の夕食。ホテル近くの料理店に出かけて食した料理の一部である。伊勢エビ、蟹、あさり、イカなどが次から次へと運ばれてくる。味付けがよい。日本人向けに作られているわけではないが、とにかく美味しい。とてもとても、全てを写している余裕がない。飲みながら食べながら、そしてデジカメにおさめる。
 
  モタモタしていると皆、たべられてしまうから忙しい。ビールは一人に一本ついており、追加は自前で支払う。飲まない女性もいたから、お陰さまで、余分な飲み代も負担しなくてすんだ。


  ツアー旅行で最も嫌いなことは、トイレタイムと称して好きでもない土産物店に連れて行かれることである。まず1日に二軒は行くことを覚悟せねばならない。市内に、きれいな公衆トイレは少ないからやむを得ない面もある。また客を案内することで旅行会社やガイドにバックマージンが入ることもある。中国政府は、日本人団体客を必ず土産店に案内することを、旅行会社に義務づけているとも聞く。
  ガイドが案内する店は、まず日本人の団体客しかこない店であろう。中国人のお客は見たこともない。我々が入ると、どこからともなく多くの接客女性が現れる。「いらっしゃいませ」と流暢な日本語が聞こえてくる。我々は全員でも21人しかいない。店にはそれ以上の従業員がいるから、ほとんど一対一の商取引となる。

  執拗に商品を説明し、購入を勧める。きれいな女性も多いから、うっかりすると不要なものを買うことになりかねない。 かようにして、最低1時間の苦行をしいられることになる。彼女たちは離れることなく、我々のあとについてくるのだ。逃げるに逃げられない時間は、ヘタな中国語を駆使 ?して誤魔化すことになる。

  中国人は器用であるから、見事に細工された様々な品々が広い売り場に置かれている。わが家がもっと広ければ、そして、これらの作品に似つかわしい立派な家ならば、ひょっとして購買意欲も湧くかも知れない。だが、なにせ狭い団地暮らしだ。そんなことで何も買わなくて済んだというものである。

刺繍をする中国女性 土産物店の豪華な店内 土産物店内にて

   

    華やかで煌びやかな商品の影に、低賃金でコツコツと刺繍を編む女性や日本語習得により職場を得た働く学生たちの姿がある。売り込む女性も必死だ。貧富の差が激しい中国。その矛盾する社会をつぎにご紹介したいと思う。(つづく)